荘川町遭難記

高山市の荘川町、行って来ました。上掲はその途上、郡上市のひるがのハイツホテル跡。まだ健在です。右隣の民宿跡は解体済でした。一般道で片道130km、所要時間3時間半。運転時間を考えると東京行きと同程度の覚悟が必要です。僕の学生時分には一般道のみでしたが、今は高速道が開通し大垣ー飛騨清見で3770円を支払えば所要時間は1時間45分で行けるようです。およそ2時間の短縮。残念なことに今の僕の2時間にはそこまでの価値がありません。当然の下道です。

ほぼ追い越し禁止片道一車線ですから、他府県ナンバーのダンプの後ろにつくと渋滞します。それにひきかえ地元の方でゆっくり走る車は皆、路側帯に避けて先に行かせてくれます。郡上市街で一度山道は途絶え、そこも抜けるとあとはまたひたすらに山間です。この日大垣の気温は30度近くあったのにいつの間にか26度で日影はひんやり。


さて、本日の目的は上掲の物件の補修&簡易清掃です。作業山積。車中一泊。翌昼に帰宅予定。準備は万端のはずでした。しかし何事にもトラブルはセットです。この日も何故か使えるはずの水が出ません。仕方なく100mほど下った川まで20Lポリタンクふたつを乗せて車で下りました。川に架かる小さな橋の前後10mほどの雪だまりに一瞬躊躇したもののなるべく川のそばに駐車しようとの考えからその雪だまりを越えてしまいます。これが運の尽きでした。水を汲み終え、さて戻ろうかと車を動かしました。ところが驚いたことに、雪だまりが越えられません。よく見れば30度ほどの上り坂。そりゃそうでしょう・・。前輪駆動のスタッドレスタイヤではある一定角度以上の雪の坂道を登れないのです。そのことは十分承知していたはずなのに・・。別の道を探そうと川沿いの雪道を下って行き止まり、そこからまた車では登攀不能となり、状況はさらに悪化し・・。これが地獄の始まりです。

結局その夜は一睡もせず一食も摂らず。途中脱水症状になりながらも雪を貪り食って命を保ち、ひたすら雪かきをして過ごしました。生まれて初めて気持ちの挫けを体験しました。生命の危機すら脳裏をかすめます。半径10km以内に生きた人間は恐らく僕だけでしょう。雨が近く不吉な雲に覆われた闇夜です。所在も知れない遠近のLED街灯が、機間から立ち上る亡霊じみた靄を浮かび上がらせています。無音の寂夜。聞こえるのは時折山間に木霊する猿の叫び声。間近い樹上からする憂鬱な梟の鳴き声。そして僕自身の絶え絶えな息遣い。普段なら恐ろしくて一時も留まれない暗黒の山道が平気というより、もうどうでもよくなっていました。この夜、この地域でもっとも恐ろしい存在は、多分、狂ったように雪を掘り返すだけの、僕だったに違いありません。

結末は、翌昼前、雪どけ完了まであと数mというところで、この別荘地を管理するセンターの職員の方が偶然通りかかり、僕を救出してくれたという次第です。夜通しで除雪できた距離は150mちょっと。厚さ平均30センチ、雪というより氷ですし、定期的に休憩というか動けなくなってー。今年は例年より雪が多く、僕のような雪による立ち往生救出事案は3件目だとか。この方にとってはただの業務のひとつでしょうけれど、僕にとっては間違いなくヒーロー登場です。感謝感謝感謝感謝。

ということで目的の作業はほとんど出来ずに帰宅という為体。ですから6月の夏至前後、再度訪問予定です。


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