荘川町後記
上掲は前回に引き続き、荘川町の山荘物件、道路とは反対側の斜面から見上げた図です。屋根の頂きは目視でおよそ15mくらいでしょうか。落ちたら無事ではすみません。急な斜面には下生えも少なく、20mはありそうな杉の巨木が疎らに佇立し、陽光が届くことのない真っ黒い地面を、太く捻じれた大蛇のような根がのたうつばかり。
この場所に来る度、自宅のある大垣の利便性が改めて思い返されてしまいます。人口15万6千、観光資源の少ない巨大工場ばかりの田舎街の大垣市。駅前商店街の鄙びたというか廃れた印象は市民として残念です。但し、生活利便性という点では、かなり高いと思います。高山市は大阪府より大きく東京都とほぼ同じ面積なのだとか。大都市との比較は酷ですけれど、イオンがない「市」だそうで。大垣はというとアクアウォークにイオンタウン、イオンモール。アルプラザも入れておきましょう。岐阜市と比較しても多いのでは。荘川町現地管理センターの方のお話では月に数回、買い出し、買いだめが基本らしく、どの家庭も貯蔵設備があるそうです。所謂豪雪地帯の冬季。住んでみなければその過酷さは大垣人には想像もできません。
当然、冬に来た事はないのですが、この地を訪れて何が辛いかというと、やはり夜です。昏く寒く永い夜。大垣では感じたこともない孤独感に苛まれます。TVを観なくなって十数年。ここではTVが欲しいです。作業していないと途端に記憶の扉が解放されます。原則、過去の事案は一瞬たりとも思い返さないという自己ルールがあります。何故なら一円の利益にもならないからです。余計な事を考えている暇も余地もありません。にも拘らず、花の色、土の匂い、細流の潺が、忘れていた過去の記憶を引き摺り出し、耐え難い孤独の暗闇へと誘うようです。きっと、山の神の祟りか、僕に憑りつこうとする浮遊霊の仕業でしょう。僕を滅ぼして、魂魄は捕り込め、骸は山の滋養としたいに違いありません。
と、話は例によってオカルト方面に向かいますが。この地域、古来人が住んだことはなく、そもそも人がいないので市街地でもごく稀な幽霊など出るはずもなく。いたとして動物の霊でしょう。猿や熊や鹿の霊が出たとして、果たして怖いでしょうか。なにやら滑稽な気がします。
訪れる度、物の怪との遭遇を期待しているのに、何事も起きません。物の怪もいないのでしょう。そういう事です。
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