近所の廃屋
昔の長屋というか、平屋の貸家の跡です。僕が少年のころ、こんな貸家に住んでいる友人知人は沢山いて、別に珍しくもありませんでした。今こうして倒壊を待つだけの廃屋を観ると、遥かな過去の遺物でしかないのですが。
確かこの並びの一軒に、親しい友人の好きな女子が住んでいて、よくストーカー紛いの張り込みにつき合わされたことを思い出しました。長身で、西洋的な雰囲気の綺麗な女子でしたけれど、今はどこで何をしているのやら。今風の洒落た家に住みながらも、当時の面影を僅かに残すだけの醜く太った同級生になど、絶対に逢いたくありません。こんな発言は批判されそうですが、美しい女性の思い出は美しいままに記憶に留めておきたいのです。
話が逸れてしまいました。感慨深い廃屋を観て僕が感傷したのは、僕自身の実家のことです。永く住み慣れた僕の実家も、いつかは取り壊される日が来ます。冥府の鬼となった僕は、それをどのような気持ちで眺めればよいのか。
ふと、映画ブレードランナーのラストシーンを思い出します。ルトガ・ハウアー演じるロイの死ぬ間際のセリフです。なんでもルトガーのアドリブだったとか。
"All those moments will be lost....in time like tears in rain...."
僕の大切な物や記憶のすべてが、やがては消えてしまいます。雨の中の涙のように。
と、メランコリーな内容になってしまいましたが、僕の野望は死んでからも続きます。きっと悪霊になって、現世の悪人を滅ぼす仕事をしようと考えています。
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